JR・東武・西武の川越3駅に一体化案 埼玉
埼玉県川越市中心部の3駅を一体化する統合案を、市建築設計協会(前田勝之代表幹事)と、東京電機大学理工学部の岩城和哉・准教授の研究室が共同でまとめた。JR、東武、西武の各鉄道の乗り換えが不便だからだという。ただ、建設費や用地、既存の商店街への影響など課題は大きい。果たして実現の可能性は――。
JR川越線・東武東上線の川越駅と、東武東上線の川越市駅、西武新宿線の本川越駅。この3駅の間で3線が交差する辺りの地下に統合駅を新設し、踏切をなくして地上部を緑地空間に変える。または、東武の2駅を統合して、西武との交差地点付近にJRの駅と別々に移し、各駅を共通コンコースで結ぶ。
協会が2009年から練ってきた統合案は、そんな構想だ。
本川越駅と川越駅は約1キロ離れているが、徒歩で移動する人は少なくない。周辺は踏切が多く、車の渋滞も激しい。統合駅を新設する案が最もすっきりする。
一方、共通コンコース案は、人の流れが変わることに伴う既存の駅前商店街への痛手をなるべく抑えようと考えた案で、乗り換えの移動距離が200メートル程度で済むという。どちらの案でも、概算で3500億円程度の費用を見込んでいる。
川越に初めて鉄道が通じたのは1895年。川越鉄道の川越駅(現・本川越駅)ができ、東京・国分寺駅と結ばれた。その後、1940年までに、当時の東上鉄道や国鉄の駅が次々と開業した。
川越市史によると、統合の動きは、その当時からあった。市長、議長、商工会議所会頭らの連名で、「三線連絡ヲ画スルニ便宜ナル適当ノ地点」に新駅を設置するよう求める陳情書が、国に提出された。しかし、駅周辺の商店街は生活権が奪われるとして、反対の意思を示したという。
その後も、「統合」案は何度か浮かんでは消えた。近年では、2005年の市議会で、当時の市長が「3線合同については、すでに前市長の時代にあきらめるということを表明している。川越市駅と本川越駅の連絡(道路)が今後の問題だ」と答弁している。
前田代表幹事は「市の幹部にも説明したが、あまり関心はないようだった。地下化すれば、例えば川島町方面への西武新宿線延伸も可能になる。国や民間から資金を引き出すことに知恵を使うべきだ。暗い時代なので夢も欲しい」と話している。(菊地敏雄)
1/11付の朝日新聞に以上の記事が掲載された。
川越は松平氏8万石の城下町で、江戸時代は新河岸川や隅田川の舟運が盛んであった。江戸へは穀物、野菜、木材、石灰を運び、江戸からは肥料や加工食品が運ばれた。石灰は青梅方面から馬で川越まで運ばれ、川越を中継地点として、所沢・飯能・越生・秩父方面と東京を結んでいた。
1899年に甲武鉄道(現在の中央線)が新宿~立川を開通させると、地域子交通形態が変わり、新河岸川の各河岸は商圏の南側で大打撃を受ける。この為、翌年に川越鉄道が計画されたが、この時に川越からの発起人が一人もおらず、町としても一切関係が無いとまで言い切った。これは川越にとっては、鉄道が既存の交通秩序を破壊する存在ととらえた事もあるが、1893年の大火で市街地の大半が焼失して経済的な余裕が無い事も原因である。1895年に川越まで開通する。
尚、この年に川越~大宮に乗合馬車が運行を開始、後に川越馬車鉄道となる。ここと翌年に設立された川越電灯が合併して川越電気鉄道となった。
川越鉄道の開業で物資の集散地としての地位が低下し、変わって沿線の所沢や入間が新たな物資の集散地として発展した。が、東上鉄道の開通により、再び物資の集散地としての地位が向上した。ただ、既存の舟運は決定的な打撃となった。この時に出来たのが川越西町と川越町(現在の川越市)駅である。
そして、1940年に東北本線と八高線を短絡して中央本線のバイパス線として川越線が建設された時に、川越駅が出来、同時期に川越西町も川越に改称している。
以上が3つの駅の誕生した経緯である。
元々、いわゆる「蔵造りの街並み」や小江戸と言われた、旧市街地に近いのは本川越で、この駅に近い東武の川越市駅が東上線の川越市での代表駅であった。この2駅は比較的近い為、通勤通学の乗り換えではよく利用されている。が、本川越駅の入口が東側にしかない為、西側にある川越市駅との乗り換えは不便である。
一方、川越駅は川越市の代表駅で、本川越駅とはクレアモールが実質的に乗り換え通路となっているが、混雑している事が多い。また、両駅間を走るバスは100円でこの区間は乗車できる。
で、実際の実現可能性だが、かなり低いと言わざるを得ない。特に統合駅が出来ると打撃を受けるクレアモールの反対が根強く、これまでも何度か議論されるたびにまとまらなかった。
筆者も大学時代は川越を利用していたが、この不便さは常に感じていた。だが、同時に統合は自分が生きている間は無理だろうとも思った。
今後の議論を注視していきたいと思う。
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